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トップページ > 法律のはなし > また、交通事故後遺症の等級の話~CTやMRIがすべてではない 諦めないで!

 以前に、視力障害で自賠責が12級と認定した件について、裁判所で3級該当と認められたケースを紹介しました。最近、自賠責が12級と認定した件について、裁判所で7級を前提に和解が成立した事件を担当しましたので、紹介します。

「Aさんの仕事」
Aさんは、建築のための重機を運ぶトレーラーの運転手でした。工事現場に重機を運んだり、運び出すのが仕事でした。運転だけでなく、積み下ろしの際に、クレーン操作の手助けをしたり、ロープを掛けたりの重労働です。

「Aさんの障害」
Aさんは、車での通勤途上、信号待ちの際に酒酔い運転の車に追突されました。頚と腰を打っており、受傷箇所の痛み、下肢のシビレ感、全身の倦怠感を訴えて救急病院に運び込まれました。膝がガクガクしているとのことでしたが、診察した整形外科の医師はムチウチ症(頚部捻挫)との診断を下し、Aさんは治療を受けて帰宅しました。毎日通院治療を受けましたが腰の痛みがひどくて十二日目に入院し、その後退院しましたが、症状は一向によくならず、しかし病院では、痛みの訴えを正面から受け止めてもらえませんでした。その間に症状は悪化し、ある高名な整形外科医の紹介で脳神経内科を受診し、そこで頚髄損傷との診断を受けました。

 Aさんは、以前は一本杖で歩けていたのですが、その後二次障害もあって車椅子の生活になってしまいました。上肢の障害も強く、私は5級程度と判断しました。
Aさんが自賠責に後遣障害の認定を申請したところ14級というもっとも軽い認定しか出ませんでした。まさにムチウチの認定です。異議申立をしましたが結果は12級、私が思っていた5級からは大きく乖離しています。

「労災は7級を認定」
そこで労災保険の障害認定の申請を行いました。労災でも交通事故による場合、交通事故と労災の後遣障害の等級の要件がほとんど同じですので、普通は交通事故の自賠責の認定等級を労災でもそのまま採用するのですが、自賠責とは別に審査をしてほしいとの申し立てをしたのです。大阪の労基署は7級との判断を出しました。
労災が7級を認めて障害給付をしているのに保険会社は自賠責に従って12級と言うので賠償の話が進まず、そこで裁判を起こしました。

「MRIに写らないと」
保険会社は、脊髄損傷(頚髄は脊髄の一部です)の場合には、受傷後症状が悪化することはないし、MRIに異常所見が写るはずなのにAさんは写っていないからAさんは頚髄損傷ではないと主張しました。確かに文献ではそれらしいことが書かれています。そこで主治医の先生に面会し、詳しい説明をしていただきました。

「主治医の診断」
先生も当初はMRIに写らないので頚髄損傷ではなくALSなどの難病ではないかと考えたそうです。しかし、ALSなどの難病をはじめ、遺伝性の疾患や感染症はいずれも否定せざるをえず、事故まではすこぶる健康であったのに事故後になって脊髄損傷と酷似する症状が出ていることから、結局消去法で頚髄損傷しか考えられないとのご意見でした。MRIの精度の問題もあり、通常はMRIに写るが、写らないからと言って頚髄損傷ではないと断定した論文はない、MRIに写らないことは頚髄損傷を否定する根拠とはならないとのご意見でした。現に話題の高度脳機能障害では写らないケースが多いとのことです。

「和解へ」
そこで先生に証言をしていただき、結局、裁判所は、頚髄損傷との確定はしなかったものの、障害と事故との因果関係を認め、障害の程度は少なくとも7級であると認めてくれましたので、それに応じた損害賠償を受けるとの和解が成立しました。
ひどい症状が残る場合、自賠責事務所の認定を疑ってみたことにより道が開けたケースでした。

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